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僕は貴女を「お姉ちゃん」だと思ったことは一度もない。

第10章 新入部員歓迎パーティ

「つまり?」

言おうとしてることはわかったけど、ハッキリ言葉で聞きたくて、わざと聞き返してみる。

「つまり、そういうことだよっ」

中村君の右手が、私の左手をそっと優しく包み込む。怪我した手首を気遣うように、痛くないように、触れるか触れないかぐらいの柔らかさでふんわりと包まれる。

「……好き……だから」

声のボリュームちっさ!!

普段の声の10分の1ぐらいの声量。でも、ちゃんと聞こえた。顔を見ると、まだ前を見据えてる。こっちを見つめて、優しく微笑みながら…なんてそんな少女マンガみたいなことは無いけど、ほんの少し顔が赤いようにも見える。

「私…も……」

本当は『私も好き』ってちゃんと言いたかったのに、喉がかすれて、声が最後まで出なかった。

なんだろう、顔がものすごく熱いし、なんか鼓動が速くなってきた。わ、話題を逸らさないと心臓に悪いっ。

「お、お腹すいてきちゃった!」

言ってから、変なコト言っちゃったかなと後悔し、何かフォローを、と考えていたら、

ぐぅぅ〜〜

良すぎるタイミングで私のお腹が鳴った。恥ずかしいよ!
なんで今、鳴るの?!

「あっ、そうだよね。折角のお肉も冷めたら美味しくないしね、まずはそのお皿にのってるのを食べなよ。他にも何か欲しければ取ってきてあげるよ」
「飲み…もの…」

恥ずかしさを紛らわす為に慌てて友美さんが取ってきてくれたお肉を頬張った私は、ちょっと喉に詰まらせかけて苦しくなっていた。

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