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僕は貴女を「お姉ちゃん」だと思ったことは一度もない。

第10章 新入部員歓迎パーティ

冷たい麦茶も、香ばしい焼きおにぎりも、お肉も野菜も、全部全部美味しくて…。
人は、一緒にご飯を食べてくれる仲間が傍にいて、そしてお腹いっぱいになればそれだけで幸せになれる生き物なのだと、食べながら思った。

入学式の日にいきなり好きな人に彼女がいると聞かされて傷心になったかと思えば、その直後に手首に怪我までしてしまう、という波乱の幕開けだったけど…。

***

「鈴ちゃん、啓太だけじゃなくてさ、俺も一応、『中村君だから』ね。そして俺には、友美っていう大切な彼女がいるんだ…」
「お兄さん、それって…」
「君はさ、『中村君って、彼女、いるんですか?』って聞いたよね。『啓太君って、彼女、いるんですか?』じゃなくてさ。だから俺は、いるよって答えただけだよ」

…私、お兄さんに、からかわれただけだったみたい。ま、手首の怪我はちょっと痛かったけど、そのおかげで中村君との距離が縮まった感はあるし、『禍を転じて福と為す』? いやいや、怪我キッカケだけに『怪我の功名』ってほうがしっくり来る?

これから、大学での勉強も、部活も、恋愛も…いろいろ苦労もあるかもしれないけど、精いっぱい頑張ろう、と。

***

「石井さん、家まで送るよ」
「ありがとう」




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