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僕は貴女を「お姉ちゃん」だと思ったことは一度もない。

第2章 1年生と1年生

「じ、自転車なら、の、乗れるようになったよ!」
「うそ!?ついこの前まで補助輪つけてたじゃん!」

 僕が5歳まで住んでた国は、けっこうな車社会で(あと、ちょっと銃社会なところもあって)子どもが一人で外に出るのは危ないってことで、僕はずっと自転車を買ってもらっていなかった。日本に帰って来てからも、幼稚園に通わず、近所に友達もいなかった僕に、自転車は特に必要なくて、初めて自分の自転車を買ってもらったのは小学校に入学してからだった。だから、最初の頃は同級生たちが補助輪無しの自転車を自由自在に乗りまわすなか、自分だけ、幼稚園児みたいな補助輪付き自転車でちょっと恥ずかしかった。
 だから夏休みの間に一人で特訓した。補助輪付きの自転車なんて、そんな子どもっぽいものに乗っているわけにはいかなかったから。それで、なんとか乗れるようになったのだ。

「…夏休みに特訓したから」
「そっかぁ。いつきもなんだかんだで成長してんだねー。お姉ちゃんは嬉しいよ」

また子ども扱い…。ていうか、弟扱いなのかな?とにかく、ちっとも『男』としては見られてないのが、なんだか寂しい。

「公園、いつ行く?」
「え?」
「さっき鈴が言ったんだろ。補助輪無しで自転車に乗れるようになったら、大きい公園に一緒に行くって」
「鈴じゃなくて、鈴姉!もしくは、お姉さまとお呼び!」
「はいはい」
「返事の『はい』は一回!」
「…お姉ちゃん、って言うよりお母さんみたい」

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