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僕は貴女を「お姉ちゃん」だと思ったことは一度もない。

第2章 1年生と1年生

「なんですって~?!6コしか年が違わないのに『お母さん』呼ばわりは無いんじゃないの?」
「わかったわかった。姉ちゃん、ごめん」

6コしか年が違わないのに、いっつも子ども扱いするのはそっちだろ、とは思ったけど、鈴の機嫌を損ねてせっかくの公園デートが流れてしまうのはイヤなので、ここは素直に謝っておいた。

「姉ちゃん?今『姉ちゃん』って言った?嬉しい!初めてじゃない?ちゃんと『姉ちゃん』って呼んでくれたの」
「なんだよ、鈴って呼んだほうがいいか?」

 急に両手を握られて恥ずかしくなって、ついぶっきらぼうな言い方をしてしまう俺。

「…呼び捨てはやめて」

 満面の笑みから急に真顔になって冷たく言われてしまう。女って難しいな…。それでもなんとか次の日曜に一緒に公園に行く約束を取りつけて、その日は家に帰った。

「母さん、今度の日曜さ、鈴姉と一緒に隣町の運動公園まで行ってくる。トランペットの演奏が聞きたいって言ったらさ、あそこなら大きい音出しても近所迷惑にならないからいいよ、って」
「あら、子どもだけで?それはまだ危ないんじゃないの?母さん、ついて行こうか」

母さんはちょっと心配性だ。

「大丈夫だよ、鈴姉は、中学生なんだぜ?」
「鈴ちゃんがお友達と一緒に中学生同士で行くなら大丈夫でも、あんたがまだ小さいんだから、何かあった時に足手まといになるでしょ。母さんもついて行きます」

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