テキストサイズ

僕は貴女を「お姉ちゃん」だと思ったことは一度もない。

第11章 理想と現実

中村君と付き合い始めて半年。
もちろん、付き合えることになった時はすごく嬉しかったし、一緒にご飯を食べたり、学部が違っても一般教養科目なんかを一緒に受講したりして、楽しかった。

でも……

私と会う時間よりも、おばあさんのお見舞いを優先されてしまったり、お互いのバイトのシフトが合わなくて、片方がヒマだと片方がバイトで、その逆もまたしかり。
学部が違うから専門科目の授業で一緒になることは無いし、吹奏楽部の練習でも、担当楽器が違うからパート別練習なんかは別々にやるし、そう、つまり、けっこうすれ違いが多くて、だんだんそのことが不満のタネになってきた。

それともう一つ、気付いたことがある。

「好き」と「憧れ」は違うのだ。

私は演奏が上手くてカッコいい中村君に憧れていた、でも、そんな憧れの相手に自分のダメな部分を見られるのが恥ずかしくて、背伸びして、それがしんどいと感じるようになってきた。もっと自然体で、リラックスできる相手と一緒にいるほうが、きっと落ち着くのだ…。一緒にいてリラックスできる人。等身大の自分で付き合える人は…?

人生で初めて出来た彼氏だったけど…
付き合い始めて半年が経った今、なんだか前ほどの情熱は無くなってきていた。
恋愛って、もっとバラ色で、毎日楽しくてって想像してたんだけどな…。

でも、別れ話をするほどの決定的な何かがあるわけでもなくて、「いない」よりは「いる」ほうが寂しくないかなぐらいの気持ちで、今もまだ付き合っている。

そして、なんだかんだであと2ヶ月ほどでクリスマスなのである。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ