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僕は貴女を「お姉ちゃん」だと思ったことは一度もない。

第12章 冬休み

クリスマスコンサートは大成功だった。
そして大学も短いけれど冬休みに入る。

夏休みは、バイトと部活が忙しいのを理由に地元に帰らなかったので、年末年始は実家に帰ることにした。

まぁ、忙しかった理由はバイトと部活だけじゃないけどね。親には言ってないけど、やっぱり人生で初めて出来た彼氏に浮かれてたってのは、正直、あったよね…。まぁ、でも、もう別れるつもりだけど。

少し寂しい気はするけど、気持ちの冷め始めた相手と惰性で付き合い続けるよりは、むしろ一人でいるほうが新しい風が吹いてくるんじゃないかとか。新しい出会いの可能性が広がるんじゃないかとか、そんな風に思ってる私がいるから、啓くんもきっと…わかってくれるはず。

付き合い始めて最初のデート(?)で行ったファーストフード店に、啓くんを呼び出す。

お店には私が先に着いた。アイスティーだけを注文して、一番奥の席に座る。初めて来た時に二人で座った席。

テーピングぐるぐるの左手が、他の人にぶつからないようにと、奥の、人があまり通らない席を選んでくれたのだ。

優しいんだよね…。すごく優しくて、気遣いが出来て。
そんな人と、今から別れ話をするんだと思うと、なぜか涙が溢れてきた。

別に、別れなくてもいいじゃん?今まで通りでもいいじゃん? 

そんな気もしてきた。


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