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僕は貴女を「お姉ちゃん」だと思ったことは一度もない。

第12章 冬休み

「ごめん、待った?」

番号札を持った啓くんが私の向かいの席に座って…

「って、泣いてるの?どした?なんかあった?」
「ごめん、何でも無い、何でも無いの…」
「鈴ちゃん、何でも無いのに泣く人なんていないよ?」
「目にゴミが入っただけ…」
「はぁ~~~」

ため息、つかれた。そうだよね、うざいよね、私。呼び出しといて泣いてて、聞かれたら「何でも無い」なんて嘘ついて。

「どんなゴミが入ったのか、話したくなったら話して。俺、とりあえず食べてるからさ」

「3番の番号札でお待ちのお客様~」
「はい!僕です!」

番号札を上に掲げて、大きめの声で店員さんにアピールする。

「お待たせ致しました、牛ステーキバーガーとポテト、チーズボール、ジンジャーエールです」
「ありがとうございます」

受け取ると、チーズボールを私のトレイに載せる。

「チーズボール、あげるから食べなよ」
「でもそれ、啓くんのでしょ?」
「足りなかったら追加でまた頼むよ。泣いてる時はね、塩分とったほうがいいよ。涙で流れ出た分を補給しなきゃ」
「何それ?」

たまに炸裂する啓くん独自の謎理論に、思わず笑ってしまった。泣いてるときは塩分取れ、なんて初めて聞いたわ。

「良かった。笑ってくれて。鈴はさ、笑顔のほうが似合うよ」
「私が泣いちゃ、ダメなの?」
「え?」
「私だって一人の、普通の人間だよ。笑ってるときもあれば、怒る時もあるし、泣くときだってあるよ」



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