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僕は貴女を「お姉ちゃん」だと思ったことは一度もない。

第12章 冬休み

「啓くんのことが嫌いになったわけじゃないの。でも、今はもう恋人って感じじゃないの。前みたいに、『友達』に戻れないかな」
「悪いけど、一度付き合った子と『ただの友達』に戻れるほど、俺は人間出来てないんだよ。仲良くしてたら、また手を出したくなるし、触りたくなるよ」
「……。」
「でも、同じ吹奏楽部員として、チームメイトとしての浅い付き合いぐらいなら出来るから。だから、俺と別れたぐらいで部活は辞めんなよ」

そういうと、啓くんは立ち上がった。けっこう量のあったバーガーもポテトも全部食べ終わっていて、その食べる速さに驚いた。私、チーズボールだけなのにまだ食べかけ…。

「ごめんね、ごめん…」
「謝るなよ。突き放せよ。期待するだろ」
「……ごめん」

最後の「ごめん」に対する啓くんの返事は、無かった。啓くんはそのまま自分のトレイのゴミを片付けて、帰って行った。

……終わった。明日、朝、9時台の新幹線で、私は地元に帰る。年が明けて大学が再開するまでずっと実家で過ごそう。

結局、バイトも辞めたし、クリスマスコンサート後は部活もしばらく休みになるから、冬休み中はヒマなのだ。

ちなみにバイトを辞めたのは、クリスマスコンサート前の練習が忙しかった時期に、シフトに思うようにはいれなくなって他の人にシフトを換わってもらうことが増えたんだけど、その少ないシフトですら急に休むことになったりして、迷惑をかけることが多かったから。しばらく休んでコンサート後にまた頑張るっていう選択肢もあったけど、所詮バイトだし、辞めさせてもらった。

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