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僕は貴女を「お姉ちゃん」だと思ったことは一度もない。

第13章 初詣、再び。

「同い年の、大学生同士でしょ?背伸びして付き合うような相手かなぁ? 相手が社会人とか、年上っていうなら分かるけど」

「そうだよね。変だよね。でも私、中学・高校と女子校だったからさ、男子ってものに幻想を抱いてたんだよね。少女漫画の中に出てくるような、実在しない男の子を理想に思い描いて、そんな『理想の男子像』を相手に押し付けて、自分もそんな相手にふさわしい自分を演じて、本来の自分で付き合ってなかった気がするの」

「でも、現実の男は自分の幻想とは違った、と」

「うん、そんなとこかな…」

「俺さ、鈴姉のこと、応援してるよ。応援してるから。せっかく女子校を卒業して共学の世界へ行ったんだからさ、いろんな人とこれからどんどん出会って行けばいいじゃん」

「樹…。あんた、なんか、ちょっと見ない間に大人になったねぇ」

「失恋は、人を成長させるんだよ」

「失恋?」

「俺、ずっと鈴姉のこと、好きだったんだよ。だから、鈴姉に好きな人がいるって聞いた時が、失恋の時」

「ごめん、樹のことは、『弟』みたいにしか思ってなくて、全然、そんな可能性考えてなかったの」

「僕は、鈴姉のことを『お姉ちゃん』だと思ったことは一度もないよ。だけど、鈴姉が僕の事を『弟』のようにしか見てないことも、気付いてた」

「ん~。今日思ったのはさ、弟っていうより、どちらかというと『従弟』もしくは『甥っ子』って例えがしっくり来るかなって…」

「僕は、弟では無いし、もちろん、従弟でも、甥っ子でもないよ。ただの『お隣さん』で、中学生になった男子、それだけだよ」

「そうだね」




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