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そして愛へ

第1章 そして愛へ

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 八月の二十日に、進さんがわたしにお願いがありますと言いました。時間があるなら、喫茶店で話したいと言いました。わたしは、進さんが作家だということは知っていましたし、進さんの探している本をいっしょに探したり、在庫にない本の注文を受けたりするときに、感じのいい人だなと思っていましたので、アルバイトのあといっしょに喫茶店に行きまして、進さんの話を聞きました。名刺を渡してくれまして、
 「来ていただいて、ありがとうございます。私は、北崎                       進です。ペンネームは、ご存じですね」
 「はい。なんどかお話しましたから。わたしの名前もご 存じだと思います。フルネームは、里村かおりです」
 「いろいろ親切にしてもらいました。ありがとうございました」
 「いえ」
 「話もたくさんしてくれましたね」
 「はい」
 「ほんとに、いい娘さんだなと思っていました」
 「そんなことないんですよ」
 「あはは。そうですとは、言えないですよね」
 「うふふ」
 「それで、里村さんに、お願いしたいことがあるんです。
  この手紙に、私のお願いしたいことを詳しく書いています。帰ってから読んでもらえませんか」
 と言って、手紙を渡してくれました。そのあとは、わたしが文学部を選んだことや好きな本のことなどを話しまして、一時間もしないで帰りました。
 帰って手紙を読んで、びっくりしました。最初に、
 「あなたが、私のそばにいてくれましたらどんなに嬉しいだろうかと思いました。それで、お願いしたいと思いました」
 と書いていました。
 進さんのお願いとは、
 「卒業するまで、いっしょに暮らしてもらえないでしょうか。
  月一回、セックスをしてもらえないでしょうか」
 と、いうものです。そうしたら、卒業するときに、借りている三百万円の奨学金を支払ってくれるというのです。お礼として、五百万円をくれるというのです。そのほかに、毎月二十万円を渡してくれるというのです。

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