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そして愛へ

第1章 そして愛へ

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 喫茶店でモーニングをゆっくり食べて、レンタカーで「やまなみハイウェイ」を走りました。「やまなみハイウェイ」は、ハイウェイという名前ですが高速道路ではありません。名前のとおり、山また山のあいだを通っている道路です。見渡す限り、ほんとに山ばっかりです。
 途中、休憩場に何カ所も止まって景色を眺めました。こんなに、山ばっかりの景色を眺めるのは初めてです。気持ちがおおらかになっていくような感じです。海を見続けたときは、穏やかな気持ちになりましたが、山を見ていると、おおらかな気持ちになります。
 「かおりさん。ヤッホーって、叫んでごらん」
 「ヤッホー」
 「私も、ヤッホー」
 「ヤッホー」
 「あっ、向こうの山で、手を振っている人がいるよ」
 「えっ、どこどこ」
 「ごめん。見えるわけないね」
 「もう」
 牛が放牧されているところがありました。何十頭もいました。百頭以上かもしれません。三好達治の『大阿蘇』という詩を思い浮かべました。あの詩は雨のなかの馬でしたが。阿蘇山から、しろい噴煙が昇っていました。茶店のような小さなお店で、蕎麦を食べました。黒くてブツブツと切れているような蕎麦でしたが、とっても美味しかったです。蕎麦粉だけで作っているそうです。
 湯布院の旅館は、一つずつが独立している離れ家でした。露天ではありませんが、温泉もついています。さっそく二人で入りました。このごろセックスをしてもらえる日には、お風呂にいっしょに入るようになりました。洗いっこもしています。笑っちゃうくらいおおきなスポンジで、進さんはわたしを、わたしは進さんを洗ってあげます。進さんの家の浴槽はあまり大きくないので、抱きあって入ります。
 それも嬉しいですが、旅館の温泉のように二人がゆっくりと入れる大きさもいいです。のんびりと、温泉につかっていました。こういうことが、旅の楽しみだと思います。

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