―短冊に託したプロポーズ―
第1章 ―短冊に託したプロポーズ―
〈裕一がどこに行っても、
私のことを好きでいてくれますように〉
字だけでわかる。理沙の切実な願いが……。普段は可愛らしい丸文字のクセに、短冊のは、ペン習字の練習でもしたのかのような、丁寧で落ち着いた字だ。
何だよ。キレイに書けば書くほど、願い事が叶う率も高まると思って、こんな字にしたのかよ。
「バカだな……。お前ってヤツは、ホントに……
っ、理沙っ……!」
理沙への想いが涙となって一気に溢れ、そのまま流れ落ち、短冊を濡らしていく。
「理沙っ……理沙ぁっ……! わぁああああっ……!」
嘘で我慢していた悲しみと、まだある吐き気も相まって、俺は、一人しかいない病室で、子供みたいに泣きじゃくった。
お前、いつから本当のことを知っていたんだよ。
知ってから、いつもどんな想いで俺を疑っていたんだよ。
どんな想いで、俺の嘘を聞いていたんだよ。
「たくっ、こんな短冊書きやがって。当たり前なことを願うなっつーの」
どこに行っても、そんなお前が好きに決まってるだろ。
どこに行っても……
どこに、行っても……
「やっぱり嫌だ。
どこにも行きたくねぇっ。別れたくねぇっ!
俺はっ――理沙と一緒にいたいんだよっ!
俺に……先の未来がなくなっても、
理沙と一緒に、未来を誓い合いたいんだよっ!」
本音をぶちまけると、悲しみも、絶望感も、副作用の吐き気も、不思議と全部治まった。
「はぁ……。『バカ』は、俺の方だよな」
死ぬことばかりで、大切なことを見失っていた。