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―短冊に託したプロポーズ―

第1章 ―短冊に託したプロポーズ―



 俺と理沙は、二人だけの特別な記念日に合わせて、名字を一緒にすることにした。

 その日のために、今までは面倒でテキトーに聞き流していた医者の言うことをよく聞くようにし、安静に安静を重ね、体調を自分なりに整えたつもりだったのに……

 結局、外出許可を得ることが出来ず、二人で役所に行くことは叶わなくて。理沙一人で、婚姻届などの書類を提出してもらうこととなった。

 結婚して以降も、俺の病気は相変わらずで、理沙には病室に来てもらうばかりの新婚生活だけど……

 それでも俺と理沙は、一緒にいるだけでも感じられる幸せを、一緒に噛み締めていた。


 短冊に託したプロポーズ(願い事)は、確かに叶っていた。


 だけど……日が経つにつれ、俺の体は病魔に敵わず、どんどん蝕まれていき、

 理沙を抱きしめることはおろか、

 上半身を起こすことも、

 手先に力を入れることさえも、

 思いどおりに出来なくなっていった。




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