狂愛の巣窟
第1章 【入り乱れた関係に…】
誰かの帰って来た音がして。
その足音はバタバタとリビングに向かってくる。
軽くお掃除していた私を見るやいなや抱き寄せてくるのは私の事が大好きな長男の一颯くんだ。
「何処か出掛けたの?」
「おかえり、うん、美容室とクリニック行って友達とお茶したよ?」
「可愛い」
髪型を見てそう言ってくれたのかな。
服はもうラフな格好に着替えてる。
「ありがとう、お腹すいたでしょ?すぐご飯作るね」
巻いた髪をアップにしてエプロンを着ける。
キッチンに立って夕食を作ろうとするもまだ2人きりだからとキスしてきて邪魔するの。
わかってる、それがいつもの一颯くんだもの。
「今日も一日ずっと十和子さんの事考えてた」
「え、ダメよ、勉強しなきゃ」
「早く会いたくて急いで帰って来たんだよ?」
「うん、おかえり」と頭をナデナデしてあげたら再びキスされた。
この歳だと歯止め効かないのでしょうね。
一番お盛んで性欲なんて無限にあるんじゃないかしら。
でも、それを止めてあげるのも私の役目。
メリハリをつけないと何もかも崩れていっちゃうから。
「はい、終わり!ご飯作るから、邪魔しないで」
「手伝うから」と胸を揉んでくる。
コレ生理前だとイラッとくるのよね。
だから目の前にたくさんの海老を出して
「じゃ、尻尾と背ワタ取ってって」と仕事を与える。
一緒にエプロン姿でキッチンに立つのも悪くない。
そのうち長女の有紗も帰って来て楽しくお喋りするのだ。
これが本来の家族像であって、主人の享さんも帰宅して夕食を取る。
「十和子、髪型変えた?」なんていち早く気付くのは本当親子ね。
「私も切りたい」
「あら、じゃあ今度行く?」
「うん!ママの担当してる美容師さんイケメンだもんね!楽しみ」
「え、そうかな?有紗から見たらそうなのかもね」
「声掛けられてないだろうな?十和子、ナンパに疎いから」と享さんまでも。
会話に入ってこない一颯くんは黙々とエビチリを食べている。
「大丈夫よ、ないってば」