狂愛の巣窟
第10章 【狂愛の巣窟ー最終章Ⅱー】
すると、いつも享さんが座る隣の椅子に座った一颯くん。
「え?」と戸惑う私にサラダのミニトマトをつまんで私に食べさせようとする。
目を丸くする私と有紗に屈する事なく。
「親父居ない日は俺と恋人同士でしょ?」
「お、それイイね!やろうやろう!」
有紗まで何言ってるのよ。
そういうの、2人きりの時だけに決まってるでしょ。
有紗の前でやめてよ。
ややこしい方向に行くから。
「久々に見せてよ、2人のイチャラブ」
さっきがっつり見てたんでしょ。
「食べながらでも良いよ、頂きます」って手を合わせて食べ始めた。
一颯くんは椅子ごと私を向かせて口の中にミニトマトを入れてきた。
食べるしかない私は静かに噛む。
座り直そうにも長い脚が邪魔して椅子を戻せない。
「あ、俺のトマト返して」って食べさせたのそっちなのに…と思いながら私の皿にあるトマトを一颯くんの皿に入れようとしたら止められて。
後頭部ごと引き寄せられ口内に舌が入ってきた。
「わーお…」と言う有紗の目の前で口内にある噛んで潰れかけてるトマトを奪われるの。
唇に付着する汁も舐めてくる。
びっくりして拒むのさえ忘れるほど固まってしまっていた。
「美味い」
「ハハハ、エローい、ママ、トマトより真っ赤じゃん」
朝から頭を抱える。
享さんが見たら発狂しそう。
というより、発想がやっぱり親子。
享さんも平然とこういう事しちゃう人だから。
昔、付き合いたての時に同じような事をされてめちゃくちゃドキドキしたのを一瞬で思い出した。
今もドキドキしてる。
バカね、胸が一杯になって何も反論出来ずに目を逸らした。
そんな私にいち早く気付いて腕を掴んでくる。
「今、他の男の事考えてるだろ?親父?」
図星をつかれて眉がピクリと動く。
「そんなんじゃないから」
「嘘だ、俺がどれだけ十和子を見てきてると思ってんの?」
「わぁ、呼び捨て」と小さく驚く有紗を横目にもう隠さないで堂々と私に攻めてくる一颯くんに釘を差そうとしただけなのに。
いきなり手を引いてソファーの方へ連れて行かれそうになる。
それはすぐに察知して拒んだら抱きかかえられ一颯くんの肩上に。