狂愛の巣窟
第2章 【主人の会社の方と…】
そして、今日という日はちゃんと指輪をしています。
失くさないかドキドキだけど。
現地にはもう半分以上の人たちが来ていて各々挨拶していた。
私たちも合流し、享さんの同僚の方や上司に挨拶して回った。
お子さんがいらっしゃる家族連れと新婚夫婦、まだ入籍はしていないが近々結婚する彼女を連れて来てらっしゃる方もいました。
まさか享さんが率先して火起こししたり燻製機で色んな食材をセットしたりとアウトドア派だったなんて今日知りました。
そうか、享さんは器用で優しいから会社では人気があるみたい。
独身女性から熱い視線を受けていらっしゃいました。
気付かないフリもひと苦労ですね。
「羨ましいです、こんな旦那さん」
わざと聴こえるように私に言っているのでしょうか。
享さんが戻って来て手を引き皆の輪へ連れ出してくれる。
「今日は俺から離れないで」
そう言うけど離れたのそっちじゃない。
置いてけぼりだったんだけど。
この会社主催のバーベキューは男性陣が全て用意し女性陣をおもてなしするのが決まりみたいです。
だから来た時にはすでに食材も切られていて肉も男性陣がチームに分かれて焼き始め、する事と言えば飲み物を配るくらいでした。
楽しく食事は進み、たくさんのご家族とも享さんを挟んでだけどお話する事が出来ました。
ほとんどが家族連れだったと思っていたらチラホラと独身チームも居たりして、でも離れていたしお話する事はほぼほぼなかった。
寧ろ、小学低学年のお子さんと折り紙やシャボン玉したりして遊んでいました。
享さんも一緒になって遊んでくれて、やっぱり子供欲しいんだろうなって肌で感じた矢先に「2人はそろそろか?」なんて言われたりして適当に誤魔化していた。
そんな事で空気を台無しにしたくはなくて「そうかもね」なんて享さんに言ったりした。
娘を19で生んでから15年のブランクがある。
今から子育てするとなると自信がない訳ではないが容易い事でもないのは身に沁みてわかっていて。
娘は……妹か弟、欲しかったりするんだろうか。
もし私が妊娠したら、一颯くんはどう感じるだろう。
「俺の子だよね」って責任を感じたりするのかな。
彼の未来を閉ざすような事、出来るはずもないし決してしてはいけない。