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狂愛の巣窟

第4章 【意のままに踊らされて…】






何かを言いかけて言葉を飲んだ有紗。
髪を撫でて「話してくれるの待ってるね」なんてこの時かける言葉として間違ってなかったよね…?
信じてる………信じてたんだよ、ママは。







音を立てて崩れていく。




狂愛の行く末に、末端に待ち受けているモノ____







「有紗、手止まってるぞ?公式教えたろ?ちゃんと頭入ってねぇな?」




「うん、ごめん……」




「どうした?熱あるか?」




「え……?イヤッ!」




「何だよ、熱計ろうとしただけだろ」




「だって急に顔近付けてくるから……」




「お前まさか意識してる?兄妹だろ〜?」




「してないもん!変な事言わないで」








これは、ほんの少し前の有紗と一颯くんの会話で私の知らない時間。
勉強を教えてくれている兄と同じ部屋で過ごしている妹。
2人は連れ子同士なので血の繋がりはありません。
ちゃんとそれを互いに理解しているし適度な距離感でした。




リビングで勉強する事もあったし、本気で喧嘩もし合う仲で私が間に入る事もしばしば。
文句を言いながらも一颯くんは面倒見も良くて何かと有紗を気にかけてはくれていました。




私と秘密の関係を続けていたのでそこに潜む落とし穴に気付けないでいたのです。
親として一番気にしないといけない点だったのかも知れません。
完全に盲点でした。




まさかこの裏で娘も絡んでいただなんて。








「ちょっとお兄ちゃんフザけないで」




「ん?何が?早く解けよ」




プリントに向かう有紗の背中合わせに座り体重かけてもたれている一颯くん。
有紗の部屋で家庭教師中なのだがいつもこんな感じらしいです。
本棚に飾ってあった写真に気付いて立ち上がる。




「え、これ十和子さん!?」




「え?あぁ、ママだよ」




それは、少し前の中学入学式の時の写真だった。
転校したので勿論前の学校で制服も違った。
有紗のお気に入り写真だったそうで。




「ママ綺麗でしょ?学校でも自慢だったな〜今もだけど」




「うん、親父よく落としたよなって思う」




「享パパ優しいじゃん、ママはそこに惚れたんだと思うよ?あ、ママの昔の写真見る?ちょっと休憩しよ〜」




「お、おう」








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