魔法の玉
第3章 花火にムカつく女子
「しっかしさぁ、縁ってのは、頼み込んで呼ばせるものじゃなくて、ごく自然に舞い込むもんだと、俺は思うんだけどなぁー」
……はん。そのごく自然な縁が、勝手にたくさん舞い込んでくるモテモテのアンタには、私の気持ちなんてわからないでしょうよ。
私はね、生まれた時からずーっとモテなくて、ずーっとフラれ続けてで、ずーっと恋に縁がないのよ。となると、頼み込んで呼んでもらうしかないじゃん。
だから、お賽銭にしては奮発レベルの千円で、確実に縁を呼んでもらおうと思ってたのに……まさか、一万円も大盤振る舞いしちゃうなんて。
お賽銭にそこまでの大金って、さすがの神様も逆に引くよね。さっき言われてムカついたけど、圭太の言うとおり。『どんだけ神頼みだよ』……だよね。
はぁ……。ますます縁が遠退いたような気がしてきた。
私って、やっぱりダメなのかな……
ドンッ!
「きゃあっ……! いったぁーいっ!」
今の力強い『ドンッ!』は、花火の音ではなくて、誰かが後ろから突進してきた音だった。
荒(すさ)んだり落ち込んだりに気を取られていたから、突然のことに対応しきれず、地べたに思いっきり倒れ込んじゃった。なのに、怪我は奇跡的に免れたみたい。
「七海っ、大丈夫かっ?」
圭太はぶつかられてないけど、私の身を案じてしゃがみ込んでくれた。それでも、好物のリンゴ飴は、離さずにしっかりと持っている。
「うん。大丈夫だけど……、ちょっとっ! いきなり何すんのよっ! 痛いじゃないっ!」
ただでさえ機嫌最悪なのに、それに輪をかけてぶつかってくるなんて! 周りの人達に、『何事か』って感じでジロジロ見られているけれど、そんなの関係ないからっ。なので、相手に容赦なく怒鳴りつけてやった。
ぶつかってきたのは、二十代ぐらいの男性だった。清潔感のあるワイシャツ姿。風貌からして会社員くさい。
ぶつかってしまった罪悪感はあるみたいで、顔色がとても青かった。