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魔法の玉

第1章 魔法の玉


 *


 普段は何もない、だだっ広いだけが取り柄の空き地が、今、昔から毎年盛大に行われている夏祭りの花火会場と化している。すぐ近くの神社では、屋台も数多く出店中。

 全国の人口のほとんどが、この町に集結しているんじゃないかというぐらいの見物客が、わらわらと溢れかえっている。

 夜空を見上げる。雲一つない、澄みきった藍色。うん。弟子達と共に作り上げた自信作を描くのには持って来いのキャンバスだ。

 時計を確認すれば、打ち上げのカウントダウンが始まる時間に近づきつつある。

 職人の血が、ドクドクと騒ぎ出す。


「おーいっ、お前らーっ! 『魔法の玉』の準備はいいかー!」


 俺の呼びかけに、周辺で待機する弟子達が、一斉に笑い声を上げた。


「親方ぁー! その呼び方、どうにかなりませんかねぇ!? 何度聞いても、イマイチ締まりがないんすけどー!」

「うるせぇ! 俺はガキの頃からそう教わってきたんだ!
 文句があるなら――『天にいる先代の親方』に言えっ!」


 俺も笑いながら言い返した。


 親父から初めて魔法の玉のことを、面白可笑しく聞かされてから数十年が経った今。

 まさか俺まで――魔法の玉を作る親父になるとはな。


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