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妄想

第2章 打合せ

優紀はタクシーを降り、千葉、犬吠埼にあるリゾート型温泉旅館「水月館」のエントランスに足を踏み入れた。そこで目に付いたスタッフらしき人間に「本日、こちらでマネージャーさんとの打合せが入っている坂田優紀です。お取り次ぎ願えますか?」と聞く。
「はい。マネージャーの黒沢から聞いております。どうぞお上がり下さい。お部屋の方へご案内致します」
優紀はフェラガモのパンプスを脱ぎ、旅館のステータスを表しているかのようなピシッと揃えられたスリッパに履き替えた。スタッフオンリーと書かれた部屋に通されると40代と思しき痩身の男性が、ソファから立ち上がり挨拶の後、名刺を差し出す。優紀も自身の名刺を渡し二人はガラス製のテーブルを挟んで座った。
「本日はわざわざ弊社の方へおいで頂き、申し訳ございません」
「いいえ。仲居さんの着付け指導に当学院講師を指名して頂いたんですから、お伺いするのは当然のことです。学院長の佐伯から、こちらに当学院の着付け講師倉田を一週間滞在させ短期集中方式で皆さんにお教えすると聞いておりますが、それで宜しいでしょうか?」「はい」
「では、こちらの文書に社印とご署名をお願い致します」

優紀は旅館に既に横付けされているタクシーに乗り、感じやすくなっている乳頭に、学院長に渡す書類入りの封筒をあてる。道の悪い所で座席がバウンドするとジェントルタッチで愛撫されているようになり「うんふっ」とした声がもれてしまう。「あれっ、お客さん、気持ち悪いの?吐くんだったら早目に言ってくださいね」
「やばっ。こんな所で欲情してたら収拾つかなくなっちゃう。ホント、牝犬みたい」優紀は、マネージャー黒沢の子宮に響く声を思い出し、一体どんな息子を持っているのだろうと想像した。

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