
止まない雨はない
第1章 マンハッタン
行為のあと、強烈な眠気に襲われながらも、ルカは正気を保っていた。
眠ったふりをすれば…彼はおのずと何を隠しているのか、教えてくれるだろう。
眠ったふりをして、目を閉じて……。
そして自分が思った通り、タカシは動いた。
ベッドからそっと長い足で彼は抜け出し、ベッドサイドに立ち、
屈んでルカの頬にキスを落としてきた。
『……ルカ、ごめん。オレ……やんなきゃならないことがあるんです。
無事で帰れないかもしれなかったから、オレ……あなたを最後にどうしても抱きたくて……』
小さな声でタカシが自分に語りかけている。
そのあと背を向け、タカシは服のポケットに入っていたナイフを取り出した。
異常なまでに光る刃先。タカシはそれをじっとみつめている。
『………危ないじゃないですか』
ルカはベッドからそっと起き出してくると、黙ってナイフを取り上げた。
『……ルカ…返してくれ!!』
『……断ります。あなたのその長くて節の太い芸術的な指は、
鍵盤を叩くためのものでしょう?
こんな物騒なものを握るためのものではないですからね!』
『ルカ!返してくれっ!オレはどうしても…』
『…どうしてもユキトの仇を討ちに盛り場へいくとでも?
ふざけるものいい加減にしろっ!…』
『……あなたには解ってはもらえないですよ。世の中、キレイゴトばかりじゃすまないんだ』
『……そうやって、彼の死も、醜い血で染めてしまうんですかっ!?
あなたが今やりに行こうとしていることは、そういうことなんですよ、タカシさん!?』
ユキトの死を醜い血で染めてしまう…。
ルカのその言葉に、タカシは膝を折った。
肩を落として、悔しそうに叫び声をあげ…。
『………泣いて、下さい。あなたは、それをずっと我慢してきたから』
ルカはタカシのそばに屈みこみ、彼の背中をそっと撫でた。
眠ったふりをすれば…彼はおのずと何を隠しているのか、教えてくれるだろう。
眠ったふりをして、目を閉じて……。
そして自分が思った通り、タカシは動いた。
ベッドからそっと長い足で彼は抜け出し、ベッドサイドに立ち、
屈んでルカの頬にキスを落としてきた。
『……ルカ、ごめん。オレ……やんなきゃならないことがあるんです。
無事で帰れないかもしれなかったから、オレ……あなたを最後にどうしても抱きたくて……』
小さな声でタカシが自分に語りかけている。
そのあと背を向け、タカシは服のポケットに入っていたナイフを取り出した。
異常なまでに光る刃先。タカシはそれをじっとみつめている。
『………危ないじゃないですか』
ルカはベッドからそっと起き出してくると、黙ってナイフを取り上げた。
『……ルカ…返してくれ!!』
『……断ります。あなたのその長くて節の太い芸術的な指は、
鍵盤を叩くためのものでしょう?
こんな物騒なものを握るためのものではないですからね!』
『ルカ!返してくれっ!オレはどうしても…』
『…どうしてもユキトの仇を討ちに盛り場へいくとでも?
ふざけるものいい加減にしろっ!…』
『……あなたには解ってはもらえないですよ。世の中、キレイゴトばかりじゃすまないんだ』
『……そうやって、彼の死も、醜い血で染めてしまうんですかっ!?
あなたが今やりに行こうとしていることは、そういうことなんですよ、タカシさん!?』
ユキトの死を醜い血で染めてしまう…。
ルカのその言葉に、タカシは膝を折った。
肩を落として、悔しそうに叫び声をあげ…。
『………泣いて、下さい。あなたは、それをずっと我慢してきたから』
ルカはタカシのそばに屈みこみ、彼の背中をそっと撫でた。
