止まない雨はない
第2章 プリテンダー
何故、
別々にしか
生きてゆけないんだろう…。
**********************************
ユキトの死から半年近くが過ぎていた。
セントラルパークでは枯葉が風に舞う季節になってきている。
「…ルカ、今朝は卵、どうする?ポーチドエッグがいいか、
スクランブルにしちゃうか?それとも、目玉焼き?」
タカシは卵を片手にキッチンで寝室に向かって声をかける。
「ああ…ごめん、タカシさん、寝過ごしちゃった。今日、オレが当番だったんじゃない?
すぐにBLTでも作るよ…」
「いいーんだよ、ルカは忙しいんだし。最近、ワケのわかんないぶ厚い本と
ずっと格闘してるでしょ?
昼間は診療があるし、大丈夫なのか?」
「いや…平気です。一人で住んでいたときなんかに比べたら、
毎日がとても充実しているので…」
ルカは今、タカシのアパートメントに身を寄せている。
休日前にはこの部屋によく訪れたりしていたのだが、
“ねぇ?ルカ?めんどくさいから、オレと一緒に住まない?”
と、タカシに誘われ、現在に至っている。
「あらびきコショウはどこだったっけ…?」
フライパンのなかでタカシに料理された卵は、スクランブルエッグ
に姿を変えた。
「コショウはスパイス棚ですよ、タカシ…」
ルカは可笑しそうに笑うとタカシにそっと近づき、棚からあらびきコショウの瓶を取り上げ、“はい、お願いしますね”
と、手渡したあと、そっと唇を重ねて離れた。
「……あーあ、今のキスで朝飯食わなくても、満足しちゃいそーだ、ルカ…」
「……大袈裟なんですから、タカシは。NYTは届いていましたか?」
「あー、ゴメン、まだドアポケット見てない」
ルカが一緒に住み始めたことで、タカシの生活も少し変った。
ストリートジャーナルをたまに買うぐらいだった新聞も新聞社を変え、毎朝ドアポケットに届くようにした。
夜は酔っ払って寝てしまうようだった生活も、ルカの仕事帰りを待ったり、迎えに出てみたりするようになった。
一緒に暮らし始めて充実できているのは、むしろ自分のほうだ…とタカシは思った。
別々にしか
生きてゆけないんだろう…。
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ユキトの死から半年近くが過ぎていた。
セントラルパークでは枯葉が風に舞う季節になってきている。
「…ルカ、今朝は卵、どうする?ポーチドエッグがいいか、
スクランブルにしちゃうか?それとも、目玉焼き?」
タカシは卵を片手にキッチンで寝室に向かって声をかける。
「ああ…ごめん、タカシさん、寝過ごしちゃった。今日、オレが当番だったんじゃない?
すぐにBLTでも作るよ…」
「いいーんだよ、ルカは忙しいんだし。最近、ワケのわかんないぶ厚い本と
ずっと格闘してるでしょ?
昼間は診療があるし、大丈夫なのか?」
「いや…平気です。一人で住んでいたときなんかに比べたら、
毎日がとても充実しているので…」
ルカは今、タカシのアパートメントに身を寄せている。
休日前にはこの部屋によく訪れたりしていたのだが、
“ねぇ?ルカ?めんどくさいから、オレと一緒に住まない?”
と、タカシに誘われ、現在に至っている。
「あらびきコショウはどこだったっけ…?」
フライパンのなかでタカシに料理された卵は、スクランブルエッグ
に姿を変えた。
「コショウはスパイス棚ですよ、タカシ…」
ルカは可笑しそうに笑うとタカシにそっと近づき、棚からあらびきコショウの瓶を取り上げ、“はい、お願いしますね”
と、手渡したあと、そっと唇を重ねて離れた。
「……あーあ、今のキスで朝飯食わなくても、満足しちゃいそーだ、ルカ…」
「……大袈裟なんですから、タカシは。NYTは届いていましたか?」
「あー、ゴメン、まだドアポケット見てない」
ルカが一緒に住み始めたことで、タカシの生活も少し変った。
ストリートジャーナルをたまに買うぐらいだった新聞も新聞社を変え、毎朝ドアポケットに届くようにした。
夜は酔っ払って寝てしまうようだった生活も、ルカの仕事帰りを待ったり、迎えに出てみたりするようになった。
一緒に暮らし始めて充実できているのは、むしろ自分のほうだ…とタカシは思った。