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止まない雨はない

第2章 プリテンダー

何故、


別々にしか



生きてゆけないんだろう…。



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ユキトの死から半年近くが過ぎていた。
セントラルパークでは枯葉が風に舞う季節になってきている。

「…ルカ、今朝は卵、どうする?ポーチドエッグがいいか、
スクランブルにしちゃうか?それとも、目玉焼き?」

タカシは卵を片手にキッチンで寝室に向かって声をかける。

「ああ…ごめん、タカシさん、寝過ごしちゃった。今日、オレが当番だったんじゃない?
すぐにBLTでも作るよ…」

「いいーんだよ、ルカは忙しいんだし。最近、ワケのわかんないぶ厚い本と
ずっと格闘してるでしょ?
昼間は診療があるし、大丈夫なのか?」

「いや…平気です。一人で住んでいたときなんかに比べたら、
毎日がとても充実しているので…」

ルカは今、タカシのアパートメントに身を寄せている。
休日前にはこの部屋によく訪れたりしていたのだが、

“ねぇ?ルカ?めんどくさいから、オレと一緒に住まない?”

と、タカシに誘われ、現在に至っている。

「あらびきコショウはどこだったっけ…?」

フライパンのなかでタカシに料理された卵は、スクランブルエッグ
に姿を変えた。

「コショウはスパイス棚ですよ、タカシ…」

ルカは可笑しそうに笑うとタカシにそっと近づき、棚からあらびきコショウの瓶を取り上げ、“はい、お願いしますね”
と、手渡したあと、そっと唇を重ねて離れた。

「……あーあ、今のキスで朝飯食わなくても、満足しちゃいそーだ、ルカ…」

「……大袈裟なんですから、タカシは。NYTは届いていましたか?」

「あー、ゴメン、まだドアポケット見てない」

ルカが一緒に住み始めたことで、タカシの生活も少し変った。
ストリートジャーナルをたまに買うぐらいだった新聞も新聞社を変え、毎朝ドアポケットに届くようにした。
夜は酔っ払って寝てしまうようだった生活も、ルカの仕事帰りを待ったり、迎えに出てみたりするようになった。

一緒に暮らし始めて充実できているのは、むしろ自分のほうだ…とタカシは思った。

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