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止まない雨はない

第2章 プリテンダー

「…じゃ、いってきますよ、タカシさん」


いつものように玄関で軽く手をあげ、ルカが出ていく。


「ああ、あんまり、無理しなさんな。ルカは華奢なんだから…無理すると倒れちゃうよ?」

「………はははそれは困るな。今日はopeが3件入っているので、気合いれて頑張りますよ…」

重いスチールの玄関扉が閉まると、タカシはすぐに扉をロックし、ルカの書斎へと向かった。

正直、盗み読みなど趣味の悪いことはしたくはない。
だが、自分の勘が間違っていなければ、ルカが何かを隠しているはずだ。

なるべく位置をずらさないように、そっと積み上げられた机の上の厚い医学書や文献を動かし、
さっきまでルカが見ていたあのエアメールの封筒を探す。

しばらく念入りに探してはみたが、残念ながら見つからなかった。

おそらく、タカシに読まれることを警戒し、ルカ自身が持ち歩いているに違いない。

だとすれば、タカシは確信する。

あのエアメールは、ルカや自分にとって、あまり芳しくない内容だということを。


「……なんとか、内容を知ることが出来たらいいんだが…」


今夜あたり、ルカをまた迎えに病院へ行ってみるのもいい。

ちょっと早めにエントランスにいれば、必ず病院関係者と会えそうだ。

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