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止まない雨はない

第2章 プリテンダー

タカシは夕方早く家を出た。

シフトでは、ルカのタイムアップは7:30pm前後のはずだが、
こっそり30分前にはエントランスに現れた。


無謀にも近い賭けだった。タカシはほとんどルカの病院のスタッフを知らない。
とくに医局ともなると、砂漠でコンタクトレンズを探すような話だった。

それでも、今朝のルカの様子があまりにも気になってしまう。
些細なことで構わない。とにかく情報が欲しいと思った。

いつも待っている場所から少し離れ、タカシは隠れていた。
さすがに11月は寒い。トレンチコートの衿を立て、エントランスを見つめた。

しばらくして、タカシの思惑を知ってか知らずか、ルカがいつもより早く現れた。

隣には、彼よりもやや年上と見られる、オペ着を着た医師がいる。


「well,succeed me for thanking you in advance(それじゃ、あとのことはよろしく)」


「Yes, got it.By the way, do you already decided the Germany going? Lukus?(承知した。だけどさ、ルカ、ドイツ行きは決めたのかい?)」

…………ドイツ行き?

タカシにとってそれは寝耳に水の話だった。

何のことだ?ルカがドイツへ行く?って…。


「I do not yet decide it. If I go to Germany, I can't come back for three years.(まだ決めかねているよ。むこうへ行けば、少なくとも3年は戻れない)」


…………3年!?


それはタカシにとって衝撃的な事実だった。
いや、その事実云々というよりは、
自分に隠して悩み続けているルカの態度の方にショックを受けずにはいられなかった。

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