テキストサイズ

止まない雨はない

第3章 遠き地にて君想うとき

ザ・ウォルドルフ・アストリアホテルは、J.F.ケネディ空港から、
20マイル以内にある高級ホテルだ。

1931年に開業した老舗のホテルでもあり、要人や大統領、ハリウッドスターなどが
利用している。

「あの紳士、いったい何者なんだ…?こんなホテルに宿泊しているなんて、
タダモノではないとは思うけど…」

≪お前さんをテストしてやる≫


あの紳士の言葉がどうしても気になったタカシは、躊躇いながらも、ここへ辿りついてしまったのだ。

エントランスに足を踏み入れた途端、場違いな自分の存在を恥じた。


………来るんじゃなかった。

フロントに立ち寄らず、そのまま背を向けて帰りかけたとき、
それに気付いたフロントマンが、慌てて声を掛けてきた。


「Excuse me sir. Are you Mr.Takashi Uesugi ?
I will must be going. It receives it from Mr.Sakaiya. Here please. (失礼ですが、ウエスギタカシ様でいらっしゃいますね?堺谷様より承っております、こちらへどうぞ…。)」


フロントマンは直接タカシの前に立ち、案内をしてくれた。
そんなことまでさせることが出来てしまう、堺谷というあの紳士、一体何者なのだろうか?
ぱっと見ただけで装飾が違う、豪華なフロアで降りるよう勧められ、
タカシはフロントマンの後に付いて行った。

しばらくしてたどり着いたキングスイートの前に立ち、フロントマンが呼び鈴を押すと、部屋のドアが開き、空港で見た数人の黒服の男性の一人が、
タカシを部屋に通してくれた。

「よォ?来たかのォ?待っておったぞ」

「お招きいただいて…恐縮です」

「まぁ…堅いことは抜きだ。そこに掛けて楽にしろ。」


広い豪華なリビングを思わせるソファに、タカシは腰かけた。
ゴブラン織りのきらびやかな装飾が施されたファブリックだった。


「……お前さんを呼んでテストといったのは…アレ、だ…」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ