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止まない雨はない

第3章 遠き地にて君想うとき

堺谷の視線の先にはあったものは、この部屋の続きとなっている隣室に置かれた、
ウォルナット色のグランドピアノだった。

「………ピアノ」

「……おぅ、そうじゃ。お前さんの腕がモノになるものかどうか、
ワシが試してやる」

…そういえば、ルカと別れる決心をしてから、ほとんどピアノには触れていなかった。
と、いまさらのようにタカシは気付いた。

「申し訳ないですが……オレ、今、全力で弾ける自信が…」

ピアノにわざと背を向け、避けるようにしてタカシは堺谷に断ろうとした。

そんなタカシを堺谷は一喝する。

「つべこべ言わんと、弾いてみろ!何か得意なナンバーは弾けるか?」

タカシは言われるままに、ピアノの前に座る。
有名な曲を今までいろいろコピーしてきた。でも今だけは、そんな陽気な曲ばかりを弾く気にはなれない。
だったら……この狂いそうなほどの胸の痛みを、ルカを思いだせるような曲を弾いてみせるだけだ。


そして……思い出せ…!


オレはそもそもこの地で何がしたかったのか?


本場のジャズを身につけたかったんじゃないのか?


そしてその途上で、


ルカにありったけの情熱を注いでいたんだ。


躊躇いながらも、タカシの指は白と黒の鍵盤の上で踊る。



ルカ………ルカ………オレの!!



大切な………ルカ………。

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