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止まない雨はない

第1章 マンハッタン

翌朝、登院してすぐにルカは彼の様子を見に行くことにした。
タカシは一般病棟に移され、病棟医が担当になっていたが、
構わず彼はタカシの病室をノックした。

“I'm here…”と室内から力ない返事がする。

『…目の具合は如何ですか?覚えていらっしゃらないかもしれないですが、
昨日、処置をさせて頂いた、山口です』

『……覚えていますよ。日本人のお医者さんに会えるなんてね。
……有難うございました。』

『……お連れの方ですが…』

『……解ってます。さっきNY市警の方が来て、教えてくれました』

『……おそらく、助けることは不可能だったでしょう。
あの傷では、ほぼ即死だと…。
それでもあなたが自分よりも彼をアンビュランスで一刻も早く運びたかったのだと…
すぐに解りました』

『…………』

『お辛いでしょうけれど…。余計なことですが、あなたが悲しんでいると、
亡くなられた方も、とても辛いのではないかと…』

『…彼、いや、ユキトは……オレを庇ってナイフで刺されたんです。
オレが…殺したようなものだ』

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