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止まない雨はない

第3章 遠き地にて君想うとき

その夜、ルカは夢をみた。

あんなに夢であいたいと想っていた、タカシの夢だった。

「ルカ……」

先生といつも言われるのがイヤで、彼に頼んで呼び名を変えてもらった。

マンハッタンのとある街の片隅にあるアパートで、幸せに暮らしていた日々…。

「……好きだよ、ルカ……」

タカシは甘く囁いて、そっと抱きしめてくれた。
指を絡めると、節が太く、指の長いジャズピアニストの彼の手だった。
自分の頬にその手で触れてくれるのが好きだった。


左目の傷に、そっと触れ返すと、彼は自分の手首をとって、指先に唇を寄せた。

「オレの……ルカ。………好きでたまらないんだ」

夜勤明けのまどろみのなかで、時には彼に求められ、身を捧げた。

彼の唇が体に触れるたびに、声が漏れぬように耐えた。

イヤじゃない…。イヤじゃないんだ。


彼に触れられて、満たされていく自分。高められて、もっとも幸せを感じて…
彼を迎え入れ、身を震わせた。


彼とひとつになった。

「ルカ……愛してる」


ゆったりと体のなかの彼の存在を感じて、身を委ねた。


オレがあなたになっているような…そんな幸せな錯覚。


ベッドのなかでそんな秘め事を繰り返し、夢中になった。

何度も愛してると囁くタカシを、固く固く抱きしめた。


------------------離れないで、オレから。

目覚めは…幸せな夢を一切さらって行ってしまった…。

夢に出てきてくれたタカシ…。

シュトライト婦人の下宿で、いつものように朝を迎えた。

また…頑張ります、オレ……。

頑張って、ある程度、メドが付いて、研究の成果を果たせたら…








日本で、あなたを死ぬ気で捜します、タカシ。


タカシに夢で会えたあとのルカに、
もう涙はなかった…。

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