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止まない雨はない

第4章 Bar Lucas

「満員って言ったって、こんなにガラガラなのに、店入ったらバレバレじゃねーか!
しかも11時閉店?やる気ねーだろっ」

鳴海が文句をいうとタカシはちょっと焦り気味に切り替えした。

「…オレーが風邪ひいて早退って言えばいいんだよ!!」

「…早退っつったって…学校じゃあるめーし、ムチャクチャだって」

「鳴海、マスターはルカ先生と二人っきりになりたいんだと思うよ。
そっとしておいてあげなきゃ…。それに二人共、思いつめてなかった?」

肩を叩きながら佐屋は鳴海をなだめた。

タカシはルカを店の外へと連れ出した。
…といっても、歓楽街のなかにある、ちっぽけな公園だった。

区画整理で余った土地に、なんとなく、植栽してベンチを置いたような、殺風景な公園だった。

少し離れた植え込みの傍に路上生活者が寝そべっている。

「…缶コーヒーで悪いけど…」

途中の自販機で買った、缶入りコーヒーをタカシはルカに手渡した。


「…オレがブラックしか飲めないこと、ちゃんと覚えていてくれたんですね」

タカシが手渡した缶コーヒーに“ブラック・ノンシュガー”と表示されたラベルを見て、ルカは嬉しそうに微笑みを浮かべた。

「……忘れるわけないでしょ?アンタ、強烈なキャラだったし…」


二人で並んでベンチに腰掛け、缶コーヒーを口にした。

「……死ぬほど、会いたかったんですよ、タカシさん」

ルカの頬から鼻にかけて真一文字についた傷さえも、ほんのりと赤くなった。

「……ホント、変ってないね。
覚えてる?アンタ、メスでこの傷をつけてからなんて言った?」

タカシはルカの顔の傷をそっと静かに指でなぞった。

「…そんなの、忘れちゃいました」


ルカは照れて俯いた。

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