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止まない雨はない

第5章 本命とラーメン

「……また始まったぞ、佐屋?」

「……しょうがないよ、鳴海。マスターはルカ先生が戻ってから、恋愛モード爆裂中だからね」

はぁぁぁ…。

タカシはまた深い溜息をつく。とうとう無視しきれずイライラが募った鳴海が、
彼に詰め寄った。

「ダァァ~!鬱陶しいぞ、マスター?
なんでそんなにルカ先生が心配なんだ?ルカ先生、男じゃん!?それにこの界隈じゃ、マスターと付き合ってるの、
超有名じゃねーか?なのになんでそんなに心配なんだっ!!」


すると、タカシはまるで鳴海の言葉を待っていたかのように、溢れるほどの胸の内を披露しはじめた。

「わかってないなー鳴海は。ルカはね、男から見ても美人サンなの!
なんていうか、そう、魂がピュアなのよ。
顔の傷とか何故出来たか聞きたくない?いや、聞かせるの、もったいないなー」

思わず鳴海のこめこみに、血管が浮き出てくる。

「ダァァッ!鬱陶しいっ!なんでルカ先生がマスターのこと好きって
信じられないんだ?バッカじゃねーのか、あァ?」

「はい、はい。オレはお前みたいにデリカシーのないガッついた恋愛してないの!
どうせ佐屋と毎晩よろしくヤッてんでしょ?ガキは余裕がないっていうかなんていうか…。その点オレとルカは違うの!お前らには死んでもわかんねーだろうなぁ…」

初心な鳴海はタカシから自分と佐屋のラブライフを指摘されると、どうも立場が弱くなる。そんな彼を見ながら、佐屋も苦笑する。

「言われちゃったね、鳴海。その通りだから、返す言葉がないね…」


どちらの味方をしているのかわからなくなる佐屋の言葉に、彼は口を尖らせた。

「お…お前が悪いっ!お前が毎晩、毎晩…」


自分で大声で言いながら、鳴海は途中で赤面して黙り込んだ。
それを横目でチラッ…とみたタカシが目だけで笑ってみせた。

「マスターも人が悪いな」

二人を見ながら佐屋も溜息をつく。もっとも、
自分の毎日の欲求が鳴海を窮地に追い込んだことには気づいてはいない。

「あ、そういえばまだ買い物行ってないからオレ、買い物行ってくるわ…」

ふいに思いついたように、タカシがさっさと店の出入り口へと歩いていく。

「ちょーーっと待った!マスター、もうすぐ開店だって!何しれっとして出かけるつもりだよ?」


鳴海は、タカシの背中にケジメをつけるかのように言い放つ。

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