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止まない雨はない

第6章 ウルトラマリン

「うっそ…鳴海、いい歳して浮き輪なんか持ってきて…」


空港のロビーで鳴海が何を考えているのか、浮き輪を持ち、麦わら帽にビーチサンだるという出で立ちで現れた彼を見てタカシは絶句した。

「ちょっと、佐屋!お前が付いていながら何なの、あのコ?
いまどき農協のオジサンたちの旅行者でもあんな場違いいないよー?」

タカシはルカの腕を取り“ルカは恥ずかしかったら他人の振りしてていいーんだよ~”とのたまいながら、さっそく佐屋に保護者としての責任を追及している。

その佐屋といえば…
RUDY PROJECT製タクティカルシリーズのサングラスをかけ、
白の薄手のジップアップのシャツをラフに着こなしていた。

「…いつも思うんだけどさ、お前って歳いくつ?
なんでイタリア軍仕様のサングラスとか、格好よくかけちゃったりしてるわけ?
末恐ろしいよ…」

「え?…そうかな。違和感ないからちょうどいいや…って思っただけだったんですけれど」

…単に佐屋のことを17歳のガキんちょだとあなどってはいけないと思えるほど、
ハイスペックを見極める目がありすぎる…とタカシは思った。

「うん!タカシさんのいうとおりだね。いまどきの高校生ってオシャレなんだなぁ…。
でも、タカシさんもお洒落なんだけれどね」

ルカは楽しそうに笑っていた。
日本に帰って来てからというもの、連日の激務でほとんど休むことが出来ないでいる。
そこへタカシからのバカンスの誘いがあったわけだ。
嬉しくないわけがない。

そのタカシのファッションセンスだが、やはりサングラスは必須アイテムらしく、
レイバンのクラブマスターをさりげなく引っ掛け、
ブラックのTシャツの上にベージュのジャケットを羽織っていた。
ズボンは麻素材のような…。

「ふふん…。佐屋がイタリア仕様ならこっちはアメリカ空軍御用達だ!
大人をなめんなよー!!」

タカシは佐屋とサングラスが軍仕様でカブったのが気に入らなかったらしい。

「……なぁ?みんな、早く飛行機乗らないと、ヤバくね?」

departureと書かれた表示板を指さした鳴海に、三人は声を揃えて怒鳴った。

「だから!せめて浮き輪片付けろって…!」

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