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止まない雨はない

第6章 ウルトラマリン

ホテルでチェックインを済ませると、タカシは佐屋にカードキーを渡した。

「君たちはこっちのお部屋。大人のオレたちはオーシャンビューだからよろしく…」

「ひでー!差をつけられた!!」

鳴海はムキになっている。

「タカシさん…。僕は別に海が見えなくても構わないですよ?タカシさんが一緒なら…楽しいですから」

鳴海のジトリとした視線が痛かったのか、ルカがタカシに申し出た。

「いーの、いーの。子供のうちは、大人との格差っていうものを、ちゃんと感じて生きてゆかないと、将来ロクな大人になんないの!あいつらの為なんだから」

まぁまぁ…と笑いながら佐屋は鳴海の肩をぽんぽん、と叩いた。

「部屋から海が見えないんだったら、ちょっと散歩してみる?
さっき、来るときに現地限定のアイスクリーム屋さん、見つけたし…」

佐屋のその言葉に、鳴海はすぐに目を輝かせ、機嫌が直る。

「行く、行く!荷物置いて、すぐ行く!!オレ、チョコチップ食いてー!」

「…そう言うと思ったよ」

佐屋は鳴海の肩に手を回し、二人はホテルのエレベーターホールへと消えていった。

「アイスに釣られるなんて…鳴海もまだまだお子チャマだねぇ…」

そんな様子をルカと一緒に見ていて、タカシは呟いた。

「…でも、そうでもないんですよ、タカシさん」


「…?」


「…実は鳴海君、2日ぐらい前に診療所に立ち寄ってくれたんですよ?」

「へぇ?こらまた、珍しいことで…」

「…バイト前に寄ったって言いながら、二人で旅行しなくていいのか?って…。
マスターとルカ先生の邪魔になるなら、オレたちは遠慮するって…
気を遣ってくれていたんですから…」

ルカから意外なエピソードを聞かされ、タカシは目を細めた。

「…金髪でやんちゃで…どうしようもないガキだと思っていたけど…
やはり佐屋のハイスペック眼力はホンモノか…」


コドモなんだから…気を遣わなくたっていいのにねぇ…。

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