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止まない雨はない

第1章 マンハッタン

『……Will you also have had the dream?
Do not die easily. (お前にも夢があっただろう?なぁ…?ユキト?あっけなく死ぬなよ)』

厳しい表情で死者にそう語りかけるタカシは決して涙をみせなかった。
それをみていたルカはごく短期間でこのタカシと関わったとは思えないほど、
彼の心が解り過ぎて辛かった。

その後雨のせいもあり、二人は早めに墓地を後にした。

『…先生に風邪をひかせては大変ですよね』

タカシはそういうと、ルカを自分のアパートメントに誘った。
むさ苦しいところですが、温かいシャワーでも浴びて、コーヒーぐらい
飲んでいって下さい…と。


それがどういうニュアンスなのか、ルカには解った。


今まで、同性とそんな経験はなかった。

それでも何故か、タカシの言わんとすることが解ってしまう。


タカシが……自分を欲している?


以前、患者として診たジプシーの老婆がこんなことを言っていた。
人間には輪廻があって、過去のカルマがあるように、
過去からの因縁のフレンドシップがあるのだと。
その人間とは、言葉を交さなくとも、通じ合うことが出来、わかりあうことが出来ると。


今なら……あの老婆の言ったことがわかるような気がするな…。


ルカは思い出して苦笑していた。

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