止まない雨はない
第8章 Fallen Angel
都会のビルの狭間に建つ、レトロモダンなマンションの一室に上杉タカシと山口瑠歌は住んでいた。
9to5のサラリーマンたちとは生活のリズムも異なる二人だが、タカシは音楽と酒と癒しを、ルカは地域医療に携わりながら、ささやかに、幸せに暮らしている。
「んー……。ルカ?もう起きたの」
自分の隣りで眠っているはずの恋人を抱こうと腕を延ばし、虚しくシーツの上だけを滑った自分の手の感触で、タカシはルカが既に起床したことを知る。
「ああ、おはようございます、タカシさん。ゆうべも遅かったでしょう?
未だゆっくり眠ってていいですよ?」
素肌の上にシャツを羽織っただけのルカがベッドサイドに立てば、タカシは確信を持って彼の腕を引っ張り、ベッドへと引きずり込もうとする。
「ああ、ちょっと!……もうタカシさん!」
ルカは笑いながらも、タカシを叱る。
「これではクリニックに時間通りに入れないでしょう?」
そうなのだ。ルカは優秀な眼科医だ。自分のせいで、彼の評判が落ちるようなことになってはいけない。
タカシは朝から愛しいルカの姿に激しい衝動を感じながらも、大切な恋人のためにそっと手を離す。
「最近帰りが遅いでしょう?タカシさんも寝不足ですよね」
ルカはさりげなくタカシの体調を気にかける。
「大丈夫。こう見えてもオレ、寝溜めが出来るほうなのよ。実はもうすぐ、うちの店が三周年を迎えるから、新しいカクテルとか試作してて…」
「え?それはお祝いしなくては!」
9to5のサラリーマンたちとは生活のリズムも異なる二人だが、タカシは音楽と酒と癒しを、ルカは地域医療に携わりながら、ささやかに、幸せに暮らしている。
「んー……。ルカ?もう起きたの」
自分の隣りで眠っているはずの恋人を抱こうと腕を延ばし、虚しくシーツの上だけを滑った自分の手の感触で、タカシはルカが既に起床したことを知る。
「ああ、おはようございます、タカシさん。ゆうべも遅かったでしょう?
未だゆっくり眠ってていいですよ?」
素肌の上にシャツを羽織っただけのルカがベッドサイドに立てば、タカシは確信を持って彼の腕を引っ張り、ベッドへと引きずり込もうとする。
「ああ、ちょっと!……もうタカシさん!」
ルカは笑いながらも、タカシを叱る。
「これではクリニックに時間通りに入れないでしょう?」
そうなのだ。ルカは優秀な眼科医だ。自分のせいで、彼の評判が落ちるようなことになってはいけない。
タカシは朝から愛しいルカの姿に激しい衝動を感じながらも、大切な恋人のためにそっと手を離す。
「最近帰りが遅いでしょう?タカシさんも寝不足ですよね」
ルカはさりげなくタカシの体調を気にかける。
「大丈夫。こう見えてもオレ、寝溜めが出来るほうなのよ。実はもうすぐ、うちの店が三周年を迎えるから、新しいカクテルとか試作してて…」
「え?それはお祝いしなくては!」