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止まない雨はない

第8章 Fallen Angel

その頃、Bar ルーカスでは、タカシがカウンターでシェイカーを振りながら、
なんとなく落ち着かない様子でいた。
店内は常連たちで溢れ、バイトに雇っている鳴海や佐屋たちもなかなか手が空かない状態が続いていた。


遅い……。

時間は10時を過ぎていた。

≪今夜は早くタカシさんのお店に伺えると思いますよ≫

ルカは今朝、そんなふうに自分に言っていた。

「おい、鳴海!悪いけど、ちょっと店番頼むね…」

タカシはオーダーに一区切りがつくと、カウンターの天板を跳ね上げ、店の出口に向かいながら留守番を頼む。


「あー!またさぼるつもりか?三周年のイベントぐらい、ちゃんと仕切ってくれって!」


口を尖らせる鳴海を無視したまま、タカシは建て付けの悪い、古びたドアを開けて出て行った。

そのまま数十メートル歩いたとき、タカシは革靴のつま先で、何か堅いものを踏みつけていた。

「ん?…………なんだろ、これ?」

屈んで拾いあげると、皮のタグが付いた、鍵だった。

タグは見るからに新しく、皮の匂いさえまだ持ち主を定めていないかのようだった。

「…………“for takashi”………タカシへ?」


その文字の刻印を見た途端、彼は言い知れぬ胸騒ぎを覚えた。

「ルカっ?いるのか?いたら返事してくれ!!」

辺りを探しながら、近くの路地を覗いて回った。

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