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止まない雨はない

第9章 ふたり

「全く!聞いて呆れるわね。愛だの恋だのって、
カタチのないものに縋って!そんなものを信じてるのは馬鹿だけよ」

「…………………っ」

ここで自分は倒れるわけにはいかない。

このジャノメに屈してはならない。

ルカは歯を食いしばりながらじっと耐え続ける。


そのときだった。

急に部屋の外部が騒々しくなりはじめる。

まるで乱闘が始まったかのように、荒くれ共が我先に走っていく。

「馬鹿がもう一人ご到着のようよ?」

ジャノメは髪を肩になびかせながら、楽しそうに笑う。全ては計画通り。

ルカさえ手のなかに居れば、タカシなど、大したことはないと踏んでいる。

「ルカっ!?何処だ、ルカ?無事かッ」

タカシの声が近づいてくる。

自分を呼んでいる声がする。

誰よりも愛しいはずの声なのに、今はそれが近づいてくることが恐ろしい。

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