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止まない雨はない

第1章 マンハッタン

『……怒らないんですか、先生?…でなきゃ、オレ…自分の眼を治してくれたあなたに、
今からかなり失礼なことをするつもりです』


『……ええ。言われなくても…解っています…何故だかわかりませんが…』


予想していた答えとは違ったルカの言葉に、タカシは驚きを隠せなかった。


『……何故?』


『……さぁ?あなたはオレを騙して連れ込んだつもりだったんですか?
でも………』


『…………』


『オレがイヤだと言ったら、あっさり笑って帰してくれたんでしょう?
そして、永遠にサヨナラだ…。違いますか?』


『………まいったな。何故そこまで…?』


『オレにも…実のところ、解らないんです。ただ、運命ってこういうことを言うんじゃないかと。
オレも医者って仕事をしていると、非科学的なことを馬鹿にしつつも、
どこかで存在していて欲しいって想いがあるんですよ…』


『…………先生、オレ、先生を騙すつもりで部屋になんて…誘ってないですよ』


『………よかった。騙されていたら、少し、悲しいですから』


『……なんだろう?オレ、親友を亡くしてヘンになっているんじゃないかと…。
でも、オレ……先生にとても惹かれているんです。
冗談みたいでしょ?笑ってやってください』



打ちひしがれ、傷ついたタカシをいったいどうして笑えようか?


『タカシさん……オレのこと、好きですか?』

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