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止まない雨はない

第9章 ふたり

鳴海と佐屋が帰った後、見舞いの品を何回かに分けてようやく室内に運び込み、
タカシは再びルカのベッドサイドに戻った。

見舞いの品であるフラワーアレンジメントは優しく、芳しい香りを部屋のなかで放つ。
そのせいだろうか、ルカがゆっくりと眼を開けながら目覚めたのだ。

「……タカシさん」

「……眼が覚めた、ルカ?ほぼ一昼夜眠ってたね」

無理に起き上がろうとしたルカをタカシは制する。

「傷は痛む?ごめんね……またオレのせいでこんな目に遭わせて」

「そんな………。大丈夫ですよ。それよりも、オレ、タカシさんがあんなに強いとは思いませんでした」

「……参ったな。ああいうのはホメられたもんじゃないね。
ルカは暴力は嫌いでしょ?軽蔑する?」

苦笑するタカシにルカは首を横に振ってみせる。

「……あの場合は正当防衛ですから」

「そう?……よかった。またルカに叱られるんじゃないかって、ヒヤヒヤしちゃったもの…」

そう言いながら、タカシはつい先ほど鳴海と佐屋が皆からの見舞いの品を持参したことを伝えた。

「…………そうだったんですね」

ルカは嬉しそうにつぶやきながら、ポロポロと涙をこぼした。

「……あなたと一緒にいることを選んで、オレは間違っていなかったですね…」

「ルカ……」

「だから………二度とオレのためだといって、突然いなくならないで」

「……どうして」

タカシは思わずビクリとする。さきほど呟いた自分の言葉を、彼は目覚めて聞いていたのではないだろうか、と。

「……夢のなかで、あなたが突然いなくなってしまうことになっていたんです。
でもオレは、あなたには死ぬまでずっと一緒に居て欲しい!!」

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