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止まない雨はない

第10章 RE:

友人を自分のせいで亡くした罪悪感と後ろめたさを感じながら、
タカシは自分のことを思って言葉をくれるルカに、
いつしか次第に惹かれていった。

指は鍵盤の上を駆け抜けていく。情熱のままに、自分はルカを愛さずにはいられなかった。
うしろめたい気持ちを抱えながらも、ルカを自分の部屋へと連れ去り、
初めて抱いた日のことを、タカシは思い出していた。

やがて二人で暮らし始め、お互いが無くてはならないほどの存在だと気付き始めた頃、
二人の進む道が二手に分かれてしまった。

(ルカの人生の荷物になるわけにはいかない。その気持ちは、今だって変わらない)

胸のなかに岩のように重しを抱えながら、タカシの指は何度も鍵盤上のパッセージを繰り返す。

それを少し離れたところで見守るようにして、ルカは聴いている。
その旋律は、タカシの即興曲であったが、彼には自分への愛が歌われていることは充分すぎるほど伝わり、胸の内が熱くなるのを感じた。

(ああ、ルカ……。お前がただいてくれるだけで、
オレは毎日救われているんだ。オレが幸せに生きて来られたのは、
全部お前のおかげなんだよ)

あの日、オレの命を救い上げてくれたルカ…。

タカシの眼には涙がこみあげてくる。無限に溢れてくるルカへの想いは
激しい旋律となって奏でられていく。

それを受け止めるように、ルカもその旋律にリズムを取るように頷いていた。

この先もどんなことがあったとしても、二人は離れてはいけないんだ。

死が二人を分かつまで、絶対に、絶対に!

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