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止まない雨はない

第10章 RE:

「……そうか。君の気持ちはよく解ったよ。確かに僕の拠点はNYだし、
君が渡米してくれることが一番望ましいとは思っている。
だけど……」

「……………………」

「僕が……君のために度々来日するようにしよう」

「ホントですかっ!?」

「ああ、そのつもりさ。もっとも、堺谷さんが
ビジネスで度々来日するから
それに同行するような形となるだろうね。その合間に
僕は出来るかぎり、君の面倒をみることにしよう」

「ありがとうございます!!」

「風間さん、有難うございます。タカシにこんな凄いチャンスを下さって、
本当に本当に…」

二人は彼に深々と頭を下げた。

「礼を言ってくれるのはまだ早いと思うよ?僕はね、
たぶん指導は全力になると思うし、厳しくなるだろうからね。
それらを全て吸収しきったときにこそ、君たちから何かひとことが貰えるように僕自身、
努力したいと思っているよ」

信じて歩いてきた道は、まさに間違ってはいない道だったのだ。




******************



その日、タカシとルカはとても穏やかな夜を過ごした。
あの著名な風間に弟子として指導を約束され、本来ならば有頂天になっているはずだったが、
二人は今、とても満たされた気持ちになっていたのだ。

「……運命ってわからないものですね」

リビングのソファーに座るタカシに、コーヒー入りのマグカップも差出し、
ルカは感慨深い様子でそう言った。

「……そうだね。だけど、オレはもう奇跡という奇跡を初めにもらってしまったから、
何が起きても慌てなくなったかも」

タカシはルカを見つめ、悪戯っぽく笑う。

「随分と余裕の持てる大人になりましたね、タカシさんは」

ルカはそれを受け、からかってみせる。

「そうだよ。オレにとってルカとの出会い以上に凄い奇跡はないから。
NYで、かけがえのない運命のひとに出会うなんて、思ってなかったから」

「……運命ですか。オレは……ちょっとしつこかっただけではないですか?」

案外真顔なタカシに、逆にからかうはずだったルカの方が神妙な顔つきになった。


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