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止まない雨はない

第10章 RE:

「ん~、どうかな。ルカをしつこいなんて感じたことがなかったから。
むしろ、二人でいられる時間が短かったじゃない?
ルカは……立派なお医者さんで、当直もあったり本当に細い身体で
いつも嘘みたいに頑張ってて…見ていたオレは自分が恥ずかしかったんだよ」

「そんなの……医師なら、当然ですよ。医師を志した日から覚悟は決めていましたから」

「だから凄いんじゃない?たぶん、ルカが医学生だった頃なんて
オレは自分の将来を“なんとかなるさ”ぐらいにしか考えていなかったもの。
なのに……アンタはどうしてこんなヤツを好きでいてくれるんだろうね」

タカシの言葉にネガティブな自虐はない。むしろ、過去を顧みることで
未来を力強く生き抜く決意が見え隠れする。
それがとても頼もしく見えたルカは、彼の首に両手を回した。

「……そんなの、決まっています。あなたが誰よりも強くて、まっすぐで……」

オレだけを愛してくれるひとだからです。

「ルカ……愛してる」

「オレもです、タカシさん」

ルカはタカシの手からそっとマグカップを取り上げ、テーブルに置いた。

そのままソファーに沈み込むようにして二人はキスをする。
最初は唇を合わせあうように触れ、そして次第に互いの空気を奪うように深く口付ける。

「うっ………ん………」

深く口付けあううち、だんだん相手を望む欲望が目を覚ます。
それはゆっくりと目覚めながらも、凶暴な生物のように荒ぶっていく。

「あっ……ふ……」

タカシはキスの合間にルカの表情を堪能する。
閉じられた瞼はわずかに揺れ、
唇をこじ開けて舌を絡めるたびに眉が寄せられた。

「ルカ……もっと……二人で感じたい」

そんなふうに強請れば、ルカは潤んだ瞳で見つめ返してくる。
無言のままに、愛することを許してくれている。

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