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ジェンダー・ギャップ革命

第4章 享楽と堕落の恋人達


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 三年前まで、えみるはどこにでもいる大学生だった。
 ロリィタファッションを楽しむ傍ら、投稿型動画SNSで活動していた彼女は、えれんが初出馬した選挙戦では、後者の趣味を活用して、一役買ったこともある。日頃は地元の魅力を発信している彼女のチャンネルは、大学在籍中に彼女がアルバイトしていたりんご飴専門店も、過去の動画を遡れば見付けることが可能だ。

 そのりんご飴専門店こそ、彼女をえれんに引き合わせたきっかけだった。

 当時、店の近くで行われていた、長沼そうまの街頭演説である。

 まだ感じやすい年頃でもあったえみるが就業中、強制的にあの演説を耳に打ち込まれねばならなかった職場環境を斟酌すれば、彼女が独善的な少子化対策にアレルギーを起こしたのも頷ける。今でこそ長沼は独立して福祉に力を入れているが、かつて往国に従っていた名残りから、彼の固守的思想は根深い。


 正義感がえみるを駆り立てたのか。或いは若者特有の、人生の上級者に対する時に生じる潔癖、反撥心か。

 どこにでもいる大学生は、社会運動団体のボランティア、選挙の際はえれんの車上運動員、今では収容所の看守──…とは名ばかりの、女専門の拷問官になっていた。


 そんなえみると、愛津は休日の公園で、流行りのダンスを稽古していた。

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