ジェンダー・ギャップ革命
第4章 享楽と堕落の恋人達
「明日、一緒に休むよ。ちゃんと病院行こう」
「有り難う。大丈夫だよ。やばいとこは打ってない」
「あいつらは収容所行きにするね。刑務所は罪が軽くなるし。すぐ出てきたら、私も困る」
仮にも英真をパートナーにと望んだ男達が、最後に見せた忘我の目。脳裏に蘇ったあの血眼が、にわかに英真をぞっとさせた。
佐々木の通報は遅かったのではないか。
今日まで一つの落ち度もなかった彼女に、英真は初めて責任を問うた。すると彼女は、さしあたり共犯者に助けを求める眼差しを、しづやに向けた。
「二十分は何もしないでって、私が頼んだんだ。心配かけてごめん、英真」
「えっ」
「あいつら、豚箱に入れるしかないなって。英真もうざかったでしょ、私もこんなに粘着されたら、何のために神倉さんに付いたか分からなくなる。軽犯罪くらいさせて、消えてもらおうかと」
「もちろん、しづや様があいつらを負かされていても、罪に問われるのは男達でした。正当防衛と言えば、この国は、特にこの町は、男に人権はありませんから」
救急箱を元の位置に戻す佐々木を何となしに目で追いながら、英真は、しづやに誘われて初めてえれんの事務所を訪ねた時のことを思い出した。
英真が往国の娘であることは疎か、昔はそれなりに権勢を振るっていた父親を知らなかったほど、しづやは政治に無関心だった。その彼女が急にえれんを支持し出したのは、男嫌いの代表に感銘を受けたからだった。
望んだものは手に入って当然の英真と、望んだものを得るための手段は選ばない彼女。あの時も、似ている、と思った。