ジェンダー・ギャップ革命
第4章 享楽と堕落の恋人達
「待って……えみるん、そろそろ休もっ……息、はぁっ、もぅ……」
頭に叩き込んだところまでを踊りきると、愛津はベンチに駆け込んだ。
日傘と水、悩んだ手を一瞬だけ宙に迷わせたあと、ペットボトルの中身を一気に飲み干した。
えみるは涼しい顔をしている。私も、と喉が渇いた風を気取る彼女は、水を切望している人間に見えない。装いも、愛津以上に活動性に乏しい。
昨日、急にえみるから誘いを受けた。
明日、一緒に踊ってくれない?
例のごとく業務連絡で顔を出していた彼女は、初め、英真達を誘うつもりだったらしい。その二人が休んでいたため、愛津が選ばれたのだった。
かつてえれんの取材も配信したえみるの動画チャンネルは、ほとんどの「清愛の輪」メンバーが登録している。愛津も例にもれない。そこでAIが勧めてくるものまで再生していた内に、今のダンスも曲だけは知った。TVや店のBGMではまず聴けない、しかしネットの中では知らなければ恥になるほどヒットしている。
「何で急に、ダンス始めようと思ったの?」
「ネタ探しに行き詰まってて。踊ってみた配信者様をターゲットに絞ってみようかな、と。良い背景になりそうな場所をいくつかピックアップして、実際に踊っているところを動画に上げる。調べてみると、野外撮影はどこでも許可が出るわけじゃなくて、あとやっぱり映えないと、踊り手さんとしてはキツい。調べてみると、こういう情報、求められているみたい」