ジェンダー・ギャップ革命
第4章 享楽と堕落の恋人達
まもなくして、愛津達から数メートル先のところに、男達が三脚やレフ板を立て始めた。
今朝からたどたどしいダンスを披露していた女二人が通行人らの興味を引いてきたように、見るからにのんびり休日を過ごす場所として公園を選んだのではないと分かる男達が、今度は盗み見の標的になった。
「男のくせに、態度大きい。こっちの邪魔にならないかな……」
えみるの懸念は杞憂に終わった。
彼らは大音量を撒き散らしもしなければ、ギャラリーが群れるほど人気でもなかった。蛇口の壁にポスターを貼り出して、その被写体にマーカーペンを滑らせながら、声を張り上げて弁論していた。
「皆さん。我々は、「善生団(ぜんいだん)」です。我々の動画チャンネルでは、国内外の不正、汚職、未解決事件などを究明して、皆様に発信しています。学校では教えられない歴史、警察が捜査を打ち切った、お偉いさん方には不都合な事件、一切の権力との繋がりのない我々は、世界のありのままを皆さんにお伝えしています。一般市民のより良い未来、全ての労働者が安心して暮らせる社会を目指して、私達は有志の政治団体「善生団」を立ち上げました。私は川名有弘(かわなありひろ)。川名有弘です。このポスターの人物、皆さんはご存知ですね?そう、そこのお嬢ちゃん、往国茂樹だよ、小さいのに偉いねぇ!よく分かったね!この往国茂樹を、皆様はどう思われますか。一昨年、この人物は何をしましたか?許されざる差別発言、時代遅れな思想は周知の事実です。しかし同時期、彼にはある不正を働いていた疑いがあります。今日はこの、往国茂樹の顔を拡大したポスターを使って、人相から、往国が本当に守銭奴かを検証します。いやぁ、拡大すると毛穴が酷いな、皆様、お目汚しごめんなさいね!」…………