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ジェンダー・ギャップ革命

第4章 享楽と堕落の恋人達







 英真としづやを──…特に英真を誘い損ねて良かった、とえみるが胸を撫で下ろした翌週、愛津はえれんに、川名に関する情報を得た。

 川名の立ち位置は、彼本人が披露していた通りだ。
 きわどい動画を発信している彼の団体が若年層の支持を得たのは、ユーモラスな切り口らしい。確かに愛津達が遠目に見たのも、題材そのものは興味もそそられなかったが、不謹慎、悪趣味でさえあるレトリックは、退屈な若者達に適度な刺激を与え得る。


「逮捕しておいた方が良くありませんか?ここも初めは有志の団体だったんでしょ。それが十一年で、ここまでになって。その川名も野外撮影がウケるなら、将来、野心が芽生えるかも知れません。男に権力を掴ませたら、危険です」

「英真ちゃんの心配は分かる。でも、ああいう男は収容所に送りにくい。重光や長沼、それに、技術者、医者や人気俳優も。支持者達の反感を買うわ」


 いかにも、えれんの話した不具合こそ、先週、英真としづやが当日欠勤した所以に繋がる。

 英真の未練がましい求婚者達は、多くが各界の有力者やその息子達だ。彼らを先週、しづやが収容所送りにした。暴力を働くよう仕向けたと聞いたが、翌日、診療が必要になったくらいには、彼女は身体を張りもした。


「しづやちゃん、怪我、大丈夫?ストーカーが犯罪なんだし、次から無理しないでね」

「次はないよ。殺すから」


 最近は冷え込む。しづやも例外なく着込んでいて、負傷の程度が愛津には確かめられないが、朗らかな印象の強い彼女がそこまでの憎悪を示したことから、男達の劣悪さは想像ついた。

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