ジェンダー・ギャップ革命
第4章 享楽と堕落の恋人達
* * * * * *
愛津達の雑談は、英真達の例の親友の話題に移った。
英真は、百目鬼というよほど思い入れのある親友の幸福を喜んで、またぞろ織葉に感謝を述べた。
そうしている内に昼休みになった。
今日も織葉はどこかへ出かけた。どこぞに新しい店が出来ただの、予約しているコスメが入荷しただの、英真やしづやが外出しても全く気にならないのに、斎藤が出前に呼ばれて以来、ほぼ必ず昼休みもえれんから離れなかった彼女の離席が、愛津は引っかかっていた。
あの日、織葉の不安定な顔を見たからだ。彼女は斎藤を避けたがっていた。退室した彼女を追いかけて、愛津はしばらく側にいた。
…──織葉さん!
呼びかけた愛津を見上げた玲瓏な顔は、それまで見てきたどんな彼女より人間らしかった。
既視感を覚えた。
いつかの夏の日、彼女も愛津を階下に見て、こんな気持ちだったのか。
戻って皆で夕餉を楽しんでこいという彼女に、愛津は首を横に振った。彼女との隔たりが恨めしかった。
長沼やLGBTQ運動団体が大音量で演説しても、滅多に苦情の出ない地区だ。週明けの空が朱色に染まる時間帯、人通りはまばらで、愛津達は事務所脇の日陰に腰を下ろした。