ジェンダー・ギャップ革命
第4章 享楽と堕落の恋人達
事後特有の妖艶さを醸すえれんに身体を向けて、織葉は彼女に脚を絡めた。
「お義母様って、女は大丈夫なの?」
「どうしたの、急に」
「自由になれたのに、浮いた話、聞かないなと思って」
離縁して、配偶者と呼んだ男を収容所へ送ったあとも、えれんの日常は変わらなかった。
肉欲は織葉で満たすだけ。
「昼、こうきに捕まっちゃった。好きな人いるって言ったら、帰ってくれた」
「いるの?」
「いないはずないじゃん」
すぐ目先の華奢な片手を引き寄せて、唇で触れた。
柔和な曲線で構成されたえれんの顔、そこにきらめく黒目がちな目を、意味深に覗く。
こうして切実に見つめると、えれんでなくても、女達は織葉に蕩ける。織葉は自分の美しさを自覚している。どのように見つめてどのように口説けば彼女達が喜ぶか、心得ている。
えれんが織葉を偶像に仕立て上げたのは、彼女の志のためだ。
「清愛の輪」の理念を象徴出来る女が必要だった。女達の興味を惹いて、女達に彼女の言葉を響かせる。そして男を不要とする女。世間の認識におけるLGBTQ運動団体との混同を避けて、えれんは織葉に特定の女へ向ける愛も禁じた。
上機嫌に目を細めるえれんにキスして、織葉はサイドテーブルの明かりを消した。
第4章 享楽と堕落の恋人達──完──