ジェンダー・ギャップ革命
第5章 良人の娘と寝る女
「ドレス、すごい。雑誌でも見たことない」
「でしょ?有り難う。知り合いのデザイナーさんに描いてもらって、教室に来てくれてる専門学校生の子に協力してもらったから」
「クラス総出で作ってくれたなんて、さすが英真。嬉しいけど、よく学校が許してくれたね」
「寄付金という賄賂を送って、授業に取り入れてもらったからねー」
進行役が近づいてきた。
タイムスケジュールに支障が出てしまいます、という彼女の案内が、英真達を次のテーブルへ追い立てた。
式直前まで出勤していたしづやの分まで、英真がいかに今日までの準備に心血を注いだかは、この披露宴でも窺い知れた。ロマンチックで、贅が尽くされている。
ケーキカットのあと、新婚二人が友人達にひと口フォークで食べさせるという、サンクスバイトのアナウンスが始まった。えれんを呼んだ英真に続いて、しづやが愛津を指名した。
「えっ?!」
「良いの?英真ちゃん」
「何で私?」
はにかみを見せながら英真に口を開けるえれんの隣で、愛津もしづやに向き直る。
ここまで至近で彼女を見つめる機会は、今日までなかった。彼女がケーキを掬う間、愛津は改めて彼女を観察して、英真の生徒達のとろけるような眼差しに納得がいった。
見るからに女好きのする彼女は、確かに、非の打ちどころなく格好良い。愛津がピンク色のスポンジケーキにかぶりつくと、視界の端に触れていた華やかな女達のテーブル席から、密やかに黄色い声が上がった。
「神倉さんのところに来て、良かった。愛津ちゃんとは一番一緒に仕事したし、これからもお世話になると思う。よろしくね」
「しづやちゃん……うん、これからも頑張ろう」
「私、神倉さんに会えて良かったです。ずっと私達、女性の希望でいて下さい」
「有り難う。英真ちゃんが一ヶ月お休みした分、たくさん仕事が残っているから、帰ってきたらまたよろしくね」