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ジェンダー・ギャップ革命

第5章 良人の娘と寝る女




 会場内が酩酊して、砕けたムードが濃さを増す頃、スピーチや余興が始まった。

 えれんがしづやの上司を代表して、祝辞を送った。そのため、英真は実家時代の人脈を使って、佐古道隆(さこみちたか)という男に同等の役目を依頼していた。

 川名の下で働く佐古が登壇すると、にわかに場の空気が凍りかけたが、彼は英真達を羨んで、尊敬しているという旨を話し始めた。


「英真ちゃんはこんなに小さかった頃から、はっきり物を言う人でした。昔の考えのご両親とは、よく意見を衝突させる子供でしたが、今や立派に成長して、理想のパートナーに恵まれて、無断で結婚までしてしまうとは。おめでとう、英真ちゃん。ご両親には訊かれるまで言わないから、安心しなさい。お父さん達に怒られたら、おじさんは英真ちゃん達の味方になります。英真ちゃんの人生は、英真ちゃんのものです。人様に迷惑のかかることでなければ、親にも決められる権利はない。今、私も恋をしています。こんな歳になって恋なんて、と思われるかも知れませんが、ある男性に想いを寄せています。彼も頭の固い人で、私の本心を知れば、説教か、減給処分を食らうかも知れません。ええ、上司ですよ。お名前は言いませんがね──…」

「川名だったりして」

「惹かれる要素、ないでしょ」


 愛津の斜め前の席で、ありあと月村が陰湿に笑い合っている。

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